終わりの空は墨をはいたような黒だった。
2010年02月18日 公開

「いらっしゃいませ」の声が耳に響た。
仕事中、緊張と不安に汗する私は、抗不安薬を取りだす。
目の前の10錠を一気に飲んでしまいたい衝動に駆られるが、
2錠だけを口にして残りをしまう。
その後、薬のせいか、いくぶん弛緩した体に強い眠気がのしかかる。
どうしようもなく休憩室に逃げ、15分だけの仮眠。
売り場に戻る廊下がやけに長かった。
夜になり、今日もやっと一日が終わる。
外に出て、ビルの谷間から見上げた空は、
墨をはいたような黒で、星が見えない。
風の冷たさに陰鬱な気分が募り、頭痛薬で痛みをごまかす。